中国語の役割語(随時更新 2012年10月9日開始)

 ここでは中国語(方言含む)で使われる役割語を紹介、調査していこうと思います。

 中国語(普通話)では基本的に一人称は「 wo3」で、老若男女を問わず使われています。

 日本語には「わたし」「わたくし」「ぼく」「おれ」など様々な一人称があり、役割語としてアニメ、漫画、小説などに用いられていますが、果たして中国語ではどうなんでしょうか。

 この疑問が出発点です。

 これまでの調査で現在までにわかっていることは以下の通り。

①中国語にも役割語は存在する(一人称「哀家 ai1jia1」など)。

②日本漫画の海賊版翻訳などで、原作の一人称に対応する中国語の一人称が用いられたりすることがあるが、正規出版されたものはみなほぼ「」で表現されている。恐らく教育部の指導要領的なものがあるため。

 

 私はネイティブスピーカーではなく、微妙なニュアンスの違いや言い回しなどはわからないので、ここでは主に一人称による役割語について調べていきたいと思います。

 

それではまずは中国語の一人称を列挙してみましょう。

・「 wo3」

話し言葉でも書き言葉でも、老若男女を問わず圧倒的に使われている一人称。

但し、方言によって発音が微妙に異なるので、演劇や相声などの口頭表現では役割語として機能できる余地がある。

例えば、「~な人=大阪人」といった固定観念を表現するのに大阪方言が用いられるように。

 

・「 an」

日本語では「おれ」だが、中国語では「おら」というニュアンス。

田舎言葉的イメージ。

詩などで田舎者、教養のない者を表現するのに使われることがある。

昔の中国の三国志ドラマでは、劉備張飛が初めて会うシーンでこれが使われていた。

募兵に応じて田舎から出てきたという設定のためか。

 

・「

ブログで使われているのを見かける。

皇帝の自称ということで、尊大さを表現するのに使われている模様。

但し、以下に挙げる「老夫」などのような荒っぽさはあまりないように感じる。

ブログなどの独り言、内心を綴るような媒体で使われるのかもしれない。

 

・「哀家 ai1jia1」

ワンピースの女性キャラクター「ボア・ハンコック」の自称「わらわ」に対応して用いられていた。

元は演劇などで用いられ、夫である皇帝や王侯を亡くした位の高い女性の自称。

そのためこれが演劇など以外で使われるとすれば、何らかの役割をもたせるための役割語であると言える。

ブログなどでもよく見かけ、女性版「おれ」的言葉。

但し、日常生活では聞かない。

こちらもブログなどの独り言、内心を綴るような媒体で使用されるよう。

 

 

・「妾身 qie4shen1」

ワンピースの女性キャラクター「ボア・ハンコック」の自称「わらわ」に対応して用いられていた。

こちらも日常生活では聞かない。

 

・「 ou3」

方言とのこと。

 

・「老夫 lao3fu1」

わし」とか「おれ」といった上から目線的言葉。

国民党の傲慢さを表現する相声作品で使われているのを見かけた。

 

・「老子 lao3zi」

上に同じく、尊大な感じ。

 

・「在下 zai4xia4」

日本語の「拙者」とか「それがし」、「吾輩」にあたる言葉。

歴史ドラマなどではよく使われる。

 

・「你爷爷 ni3ye2ye」

直訳すると「あなたのじいさん」だが、相手に偉ぶったり尊大に見せたりするときに使う自称。

 

・「老娘 lao3niang2」

 

 

 *中国語の語気助詞について

・「 a」

 

呀 呐 嘞 哦 啦

・「 o」

使用例

 「我很喜歡喔!」 

→台湾の出版社大然文化(2003年に倒産)が発行の「JoJo冒險野郎(ジョジョの奇妙な冒険)」44巻P62、吉良吉影のセリフ

 

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